「拝見する」の使い方に自信ありますか?ありがちな誤りに要注意!
先日、会社の会議で50歳過ぎの上司が敬語の誤りを連発してました。
「なんだその言葉遣いは!?」
「ちゃんとした日本語を話せ!」
普段、後輩にこんな感じで口やかましく言ってくる上司なので、普段言われていることをそっくりそのままお返ししたい衝動に駆られましたが、できるのはせいぜい心の中でツッコミを入れるくらいなもの。こういったところが上下関係の嫌なところなんですけどね。
まぁそれはそれとして、その先輩が間違って使っていたのが「拝見する」という言葉。そう、「見る」の謙譲語ですね。
その先輩に限らず、たまに間違った使われ方をするのを耳にすることがあるので、ここでは「拝見する」の正しい使い方についてまとめてみようと思います。
重箱の隅をつつくようなところもあるかもしれませんが、こっそり誰かにブログのネタにされないように日頃から正しい使い方をしておきたいですね(笑)
もくじ
「拝見する」の正しい使い方
「拝見する」は「見る」の謙譲語なので、「自分」が「見る」ことを遜っていうのが正しい使い方です。
なので、他の人が「見る」ことには絶対に使いません。
自分が見ることを表すと覚えておけば、自ずと正しい使い方ができますが、慣れていないとついつい誤った使い方をしてしまいがちです。
次に、正しい「拝見する」を使った例文と、ありがちな失敗例についてお伝えします。
「拝見する」を使った例文
例えば、こんな感じで使うのが正しいです。
「資料を拝見しますと…」
「拝して見ます」と、自分をへりくだらせて相手を敬う使い方ですね。
「資料を見ます」と言っても間違いではないですが、正しい敬語を使えるだけでも相手に与える印象はかなり違ってきます。
電車や駅でも、「切符を拝見します」と言いますが、「切符を見せてください」と言われるのとではだいぶ印象が変わりますね。
ありがちな「拝見する」の誤った使い方
気にして聞いていると、この拝見するという敬語の誤った使い方をして失敗している人は結構多いです。
まず、拝見するの「拝」は、「おじぎをする」や「ありがたがる」、「相手をつつしみ敬う」といった意味があります。参拝という言葉から想像するとわかりやすいですね。
この「拝」の意味を考えてみると、誤った使い方はすぐに判断できると思います。
失敗例1:すでに拝見されたかと存じますが
最初に書いた上司が連発していた間違いがこれ。「見る」を尊敬語に変換したつもりになって「拝見」を使う誤った使い方が見受けられますが、相手をへりくだらせていることになるのでかなり失礼な表現となってしまいます。
取引先の人に対して、「(拝して)見ていると思いますけど」って意味がわかりませんよね。とにかく「見る」という単語を「敬語っぽい単語にしてみた」という感じなんでしょうけど、意味としては意図と真逆の意味になってしまいます。
これは他の人にもすぐに間違いだと気付かれやすいので注意が必要です。上司や取引先の人が気づいて突然怒り出したなんて大きな失敗をする前に正しい使い方を身に着けておきたいですね。
次に挙げる使い方は、文法的には誤りだけれど多くの人が使っている例です。
失敗例2:拝見いたします、拝見させていただきます
いたすは「する」の謙譲語であるなので、二重敬語ですし、同様に「させていただきます」も「する」の謙譲語なので二重敬語になってしまいます。
ただ、「拝見いたします」は特に一般的に使用されることが多くなっているために違和感を感じない人が増えてきている傾向にあります。
大多数が違和感を感じないとなれば正しい言葉として定着するので、文法にこだわれば(=正確に言うと)誤りであるが現在は正しいという解釈になっていく可能性もあるでしょう。言葉は生きていると表現される所以ですね。
ただ、最近はとにかく「させていただく」が多用されているため、どちらも誤りではないと解釈される日も遠くないかもしれません。個人的には何でもへりくだり過ぎと思ってしまいますが、時代の流れが言葉にも反映しているのでしょうかね。
「見る」の敬語は正しく使えますか
誤った使い方を防ぐためにも、「見る」の敬語を確認しておくと良いでしょう。
・尊敬語:ご覧になる、見られる
・謙譲語:拝見する、見せていただく
・丁寧語:見ます
尊敬語とか謙譲語とか面倒くせーって人もいるかもしれませんが、日本語の良さの一つだと思いますし、適切に敬語を使える人は格式高く見られるのでしっかりと使えるようになりたいものです。
より丁寧な「見る」の敬語表現
基本的には口語表現として用いられることは少なく、ビジネス文書などで用いられる表現ですが、「見る」のより丁寧な敬語表現というのも存在します。
高覧(こうらん)
他人が見ることの尊敬語。
例文:資料をお送り致しますので、ご高覧ください。
笑覧(しょうらん)
他人に見てもらうことの謙譲語。「笑いながら見る程度のものです」という謙遜表現。
例文:お立ち寄りの際は、ぜひご笑覧ください。
ビジネス文書を作成する機会がある人は特に、こうした表現を覚えておくと役に立ちます。
「拝見する」とセットで覚えておきたい敬語
せっかく「拝見する」の正しい使い方を覚えたのなら、同じような構成の敬語セットで覚えておくと効率が良いです。それがこの2つ。
- 拝読
- 拝聴
見るのを「読む」「聴く」に変わっただけのことなので、難しいことは何一つありません。
例文:いただいたメールを拝読しました
例文:貴重なアドバイスを拝聴することができました
メールを見ました、アドバイスを聞くことができましたといった表現よりも格式が高い表現に感じられませんか?
たった一つの単語を変えるだけでも印象を変えられるのですから、正しい敬語を使えるようになっておきたいところですね。
まとめ
ここでは「見る」の敬語について、尊敬語、謙譲語、丁寧語をご紹介しました。
謙譲語である「拝見」を尊敬語のように使ってしまうのはよくある間違いなので注意したいところですね。
そのほか、二重敬語としての誤用もありますが、もしかすると使う人の数が多くなると正しい使い方と認識されるようになってくるので時代に合わせて柔軟に考え方を変えていく必要があるでしょう。